従業員研修の受講率を上げるには、研修の目的を伝える、参加しやすい日程を設定するなど、受講を妨げている原因に応じた対策が必要です。
前編では、受講率が上がらない主な原因として、「研修を受ける目的やメリットが伝わっていない」「業務と研修のスケジュールが合っていない」「研修の案内だけで終わっている」という3つの問題と、すぐに取り組める対策を紹介しました。
しかし、一度受講率が改善しても、研修そのものが業務に役立つ内容になっていなかったり、実施後の見直しが行われていなかったりすると、次回以降の参加につながらない可能性があります。継続的に受講される研修にするためには、参加しやすい環境だけでなく、研修内容や運用方法も含めて改善していくことが重要です。
後編では、研修に参加しやすい運用体制の整え方、研修内容の見直し方、実施後の評価と改善について、具体的なポイントを紹介します。
参加しやすい研修の運用体制を整える
研修の受講率を継続的に高めるには、参加者への呼びかけだけに頼るのではなく、従業員が研修に参加しやすい状態を組織として整えることが重要です。
研修の必要性を理解していても、通常業務が優先されて参加できなかったり、受講できなかった人へのフォローが行われなかったりすれば、受講率は安定しません。
一度の案内や日程調整で終わらせず、研修を通常の業務の中で無理なく受講できる仕組みを考えてみましょう。
研修を業務の一部として位置づける
研修への参加を従業員個人の判断に任せていると、忙しい時期ほど通常業務が優先されやすくなります。
「時間に余裕があれば参加するもの」という位置づけでは、研修の重要性を理解していても、受講時間を確保することは難しくなります。
特に、会社として受講してほしい研修については、研修も業務の一部であることを明確にし、勤務時間の中で受講できる環境を整えることが必要です。
そのためには、受講者本人への案内だけでなく、管理職にも研修の目的や対象者、必要な時間を共有しておくことが重要です。
上司が研修の必要性を理解していれば、会議や通常業務との調整もしやすくなります。
受講方法に選択肢を持たせる
従業員によって業務内容や勤務時間、働く場所は異なります。
全員が同じ日時・同じ方法で受講することを前提にすると、それだけで参加できる人が限られてしまうことがあります。
集合研修だけでなく、オンラインでの参加や録画視聴、複数日程での開催など、研修の目的に合わせて受講方法に選択肢を持たせることも有効です。
ただし、選択肢を増やせばよいとは限りません。
たとえば、参加者同士で意見交換を行う研修を録画視聴だけにすると、本来期待していた効果が得られない可能性があります。
研修内容と受講しやすさの両方を考えながら、適した方法を選びましょう。
受講状況を把握してフォローする
研修の案内をした後は、実際に誰が受講したのかを確認することも重要です。
未受講者がいる場合も、すぐに「研修への関心が低い」と判断するのではなく、業務との日程調整ができなかったのか、案内を見落としていたのか、受講方法に問題があったのかなど、理由を確認してみましょう。
受講期限前にリマインドを行ったり、参加できなかった人に別日程や録画視聴を案内したりすることで、受講の機会を確保できます。
また、未受講の理由を記録しておけば、次回の研修日程や開催方法を決める際の参考にもなります。
受講状況を把握することは、単に参加者数を確認するためだけでなく、研修の運用方法を改善するための情報を集めることにもつながります。
関連記事
研修内容を「受ける価値のあるもの」にする
参加しやすい環境を整えても、研修そのものが実際の業務とかけ離れていれば、次回以降の参加意欲は下がってしまいます。
研修を継続的に受講してもらうためには、「参加しなければならない研修」にするだけでなく、受講者自身が業務に役立つと感じられる内容にすることも重要です。
対象者の業務や知識レベル、研修で身につけてほしいことを整理したうえで、内容や伝え方を設計しましょう。
対象者の業務や知識レベルに合わせる
同じテーマの研修でも、対象者によって必要な内容は異なります。
すでに基本的な知識を持っている人に初歩的な説明を繰り返したり、反対に予備知識がない人に専門的な内容を説明したりしても、研修の効果は高まりません。
また、部署や職種によって、日常業務で直面するリスクや求められる対応も異なります。
全従業員に共通して伝える内容と、特定の部署や役職に必要な内容を分けて考えることも有効です。
研修を企画する際には、対象者の業務内容や現在の知識レベルを確認し、「誰に、何を身につけてもらう研修なのか」を明確にしておきましょう。
たとえば情報セキュリティ研修であれば、全従業員にはパスワード管理やフィッシングへの基本的な対応を伝え、管理職にはインシデント発生時の報告・判断について扱うなど、対象者に応じて内容を変える方法があります。
伝える内容を詰め込みすぎない
研修の機会が限られていると、「せっかくなのでこれも伝えておこう」と内容を増やしてしまいがちです。
しかし、短時間の研修に多くの情報を詰め込むと、受講者にとって何が重要なのか分かりにくくなります。
研修中は理解できても、終了後には重要なポイントが残らないということもあります。
一度の研修ですべてを伝えようとせず、その研修で必ず理解してほしいことや、実際に取ってほしい行動を絞ることが重要です。
補足的な情報は資料として配布したり、複数回の研修に分けたりするなど、受講者が理解しやすい情報量になるよう調整しましょう。
実務に近い事例や演習を取り入れる
知識を説明するだけでは、実際の業務でどのように行動すればよいのかまで理解できないことがあります。
そこで、実際の業務で起こり得る事例やケーススタディ、簡単な演習を取り入れることで、学んだ内容と日常業務を結びつけやすくなります。
たとえばフィッシング対策の研修であれば、「不審なメールに注意してください」と説明するだけでなく、実際のメールを想定した例を示し、どこを確認すべきかを考えてもらう方法があります。インシデント対応であれば、「問題が発生したら報告する」というルールを伝えるだけでなく、「この状況なら誰に、どのタイミングで報告するか」を考える演習にすることもできます。
すべての研修で大規模な演習を行う必要はありません。短い事例や問いかけを加えるだけでも、受講者が自分の業務に置き換えて考えるきっかけになります。
関連記事
研修後の評価を次回の改善につなげる
研修は実施して終わりではありません。
継続的に受講され、実際の業務に活かされる研修にするためには、実施後の結果を確認し、次回の内容や運用方法を見直すことが重要です。
特に受講率だけを見ていると、「多くの従業員が参加したものの、内容は十分に理解されていなかった」といった問題を見落とす可能性があります。
何を目的として実施した研修なのかを基準に評価し、そこで得られた情報を次の研修に反映する仕組みをつくりましょう。
研修の目的に合った評価指標を決める
研修の評価方法は、目的によって異なります。
基本的な知識を身につけてもらうことが目的であれば、研修後の確認テストなどで理解度を確認できます。
一方、実際の業務で適切な行動を取れるようになることが目的であれば、テストの点数だけでは十分に評価できないこともあります。
その場合は、アンケートで「実務で活用できそうか」を確認したり、一定期間後に業務での活用状況を確認したりする方法も考えられます。
受講率、理解度、満足度、実際の行動など、何を確認すれば研修の目的を達成できたと判断できるのかを、研修を実施する前に決めておくことが重要です。
受講者のフィードバックを次回に活かす
受講者からのフィードバックは、研修を改善するための重要な情報になります。
ただし、「研修に満足しましたか」と聞くだけでは、具体的な改善点を把握しにくい場合があります。
「分かりにくかった内容はあったか」「実際の業務に活かせそうか」「時間や開催方法に負担はなかったか」など、次回の改善につながる質問を設定することがポイントです。
また、すべての意見をそのまま反映する必要はありません。
複数の受講者から同じ指摘が出ているところや、研修の目的達成に影響する問題を優先して確認し、内容や開催方法の見直しにつなげましょう。
定期的に研修内容と実施方法を見直す
一度作成した研修を毎年そのまま繰り返していると、実際の業務やリスクの変化と内容が合わなくなることがあります。
特に情報セキュリティの分野では、新しいサービスや働き方の導入、攻撃手法の変化などによって、従業員に求められる知識や行動も変わります。
研修資料の内容だけでなく、対象者、開催時期、受講方法、理解度なども定期的に確認し、現在の業務環境に合った研修になっているかを見直しましょう。
すべてを毎回作り直す必要はありません。
受講率やアンケート結果、社内で発生した問題などを確認しながら、必要な部分から更新していくことで、担当者の負担を抑えながら改善を続けることができます。
関連記事
まとめ
従業員研修の受講率を継続的に高めるためには、参加を呼びかけるだけでなく、従業員が参加しやすい運用体制を整え、受講する価値を感じられる研修にしていくことが重要です。
業務の中で受講時間を確保できるようにする、対象者に合わせて研修内容を設計する、実務に近い事例や演習を取り入れるなど、研修の運用と内容の両面から見直してみましょう。
また、研修は一度改善すれば終わりではありません。
受講率や理解度、受講者からのフィードバックなどを確認し、現在の業務や従業員の状況に合っているかを定期的に見直すことが、継続的な改善につながります。
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは自社の研修で改善できそうな部分を確認し、取り組みやすいところから見直していきましょう。
研修の設計や運用、実施後の改善についてお困りの場合は、合同会社Synplanningまでご相談ください。企業の状況に合わせた従業員教育の設計・運用を支援しています。