セキュリティ教育は「知識を伝えたから大丈夫」とはいきません。社員の行動が変わらなければ、ミスや事故のリスクは残り続けます。
本記事では、効果的なセキュリティ教育を実現するために、自社に合った教育方法をどのように選ぶべきか、そのポイントや注意点について詳しく解説します。

社員の行動を変えるには、自社の状況に合った研修を選定・設計する必要があります。
だからこそ、セキュリティ研修を計画する際に最初に直面するのが、「どの教育方法が自社に合っているのか?」という課題です。ここで間違った選定をすると、

  • 誰にも刺さらない教育になってしまう
  • 形だけの受講で終わってしまう
  • 時間もお金もかけたのに、事故が減らない

といった結果につながりかねません。

1. 自社に合う教育方法の要件が設定できていない

▼ 社内環境への適合性の欠如
たとえば、リモート中心の企業なのに集合研修を前提とした設計にしてしまう。
すると「参加できなかった」→「知らなかった」→「フィッシングメールを開封した」といった事故のリスクが高まります。

▼ コストに関する誤解
動画教材が安いからといって導入しても、それが自社の社員にとって「理解しやすい」「実践に結びつく」形式でなければ意味がありません。
安さを優先するあまり、本来守るべき情報資産がリスクにさらされてしまうことも。

▼ 目的の不明確さ
「なんとなく研修っぽいことをやる」だけでは、セキュリティリスクは減りません。
何を達成したいのか(例:標的型メールの判断力を身につける/パスワード管理の見直しを促す)を明確にしないと、手段が目的化してしまいます。

2. 目的の整合性よりもコストメリットを優先してしまう

▼ 短期的なコスト削減
「安く済ませよう」と思って教材を選ぶと、社員の記憶に残らず、結局事故につながることがあります。
メール誤送信、パスワードの使い回し、機密情報の誤開示…こういったヒューマンエラーは、伝わらなかった教育が原因かもしれません。

▼ 長期的価値の無視
たとえば1回1,000円の教育でも、内容がしっかりしていれば事故のリスクを大きく下げられる。
でもその価値を見誤ると、「安くて失敗する教育」を選びがちです。

▼ コスト効果の不足した評価
「効果があるか」の視点がなく、金額や導入のしやすさだけで選定してしまうと、実際には教育効果が見えず、改善もしづらくなります。

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3. 勤務時間などの社内環境を考慮していない

▼ 融通の利かないスケジュールと実施方法
オンライン研修を計画しても「その時間、全員がオンラインに集まれるか?」という視点が抜け落ちると、受講できない社員が生まれ、セキュリティの穴になります。

▼ 文化的な不一致
オンラインの研修を計画し、オンラインツールの参加URLを配布しても「紙の資料を読んでおいてください」スタイルが文化として根付いていない会社でそれをやっても、誰も読まない。結果的に、対策が浸透しません。

▼ 技術的な適合性の欠如
古い端末やネットワーク環境では動画がまともに再生できず、途中で諦めてしまう。そんなケースも実際にあります。

解決のために取り組みたいこと

  • 明確な目的と要件の整理
     「どんなリスクを防ぐために、誰に、どんな行動を身につけてもらいたいか」を定義し、それに合う形式を選ぶ。
  • コストと効果のバランスを意識
     安さだけで選ばず、教育後の行動変化が期待できるか?事故率を下げられるか?という視点で評価する。
  • 勤務スタイルに合わせた柔軟性
     録画とライブを組み合わせる、スマホでも見やすい形式にする、など参加しやすさを設計に組み込む。
  • 関係部門と一緒に検討する
     情報システム部、HR、現場のマネージャーなど、複数部門と協力して「本当に現場で機能する教育方法」を考える。
  • フィードバックと改善を前提に
     「一度作って終わり」にせず、受講後の声や行動変化をもとに改善していく文化をつくる。
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まとめ

「教育がうまくいかない」の裏には、社員の行動変化につながらない教育方法の選定ミスが潜んでいることがよくあります。セキュリティ教育の失敗の本質は、“わかる”ことより“やらなくなる”こと
自社の現実に合った、効果的な方法を選ぶことが、リスクを減らす最初の一歩です。

「教育がうまくいかない」の裏には、こうした“方法の選び方”そのものに原因があることも少なくありません。手段が合っていないままでは、どれだけ手間やコストをかけても成果が見えづらく、社内のモチベーションも下がってしまいます。

社内だけでは判断が難しいと感じたときは、外部の専門家をうまく使うのも一つの方法です。
合同会社Synplanningでは、伴走型のセキュリティコンサルを通じて、お客様の現状にフィットした研修や体制づくりをご提案しています。リーズナブルな価格設定で、無理なく始められるのも特長のひとつ。

最終的には「お客様自身で自走できるセキュリティ対策」の実現をゴールとして、一緒に課題の整理から支援します。「うまくいかない」の段階で立ち止まった今こそ、見直すタイミングかもしれません。