企業へのサイバー攻撃や個人情報の流出が相次いで報じられるなか、ランサムウェアによる被害も深刻な状況が続いています。
警察庁が公表した2026年上半期の統計では、ランサムウェアの被害報告件数が123件となり、半期として過去最多を記録しました。

ランサムウェア対策の重要性は広く知られるようになりましたが、セキュリティ対策を導入していても、被害を完全に防げるとは限りません。
重要なのは、対策を導入するだけでなく、適切に運用し、継続的に見直すことです。

本記事では、ランサムウェア被害の現状と、対策をしていても被害が発生する理由を整理し、中小企業が見直しておきたいセキュリティ対策のポイントを解説します。

ランサムウェア被害の現状と中小企業への影響

ランサムウェアによる被害は、大企業だけの問題ではありません。
企業規模や業種を問わず被害が報告されており、中小企業にとっても注意が必要なサイバー攻撃の一つです。

また、近年のランサムウェア攻撃は、単にデータを暗号化して使用できなくするだけでなく、情報の窃取や公開を伴うケースもあります。
まずは、警察庁の統計から被害の現状を確認していきましょう。

警察庁の統計で見るランサムウェア被害の現状

警察庁が2026年9月に公表した「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2026年1月から6月までのランサムウェア被害報告件数は123件でした。

これは、2020年下半期に統計を開始して以来、半期の被害報告件数として過去最多となる数字です。
前年同期の116件からも増加しており、依然として深刻な状況が続いています。

また、被害は特定の業種に限られていません。
製造業をはじめ、卸売・小売業、情報通信業、医療・福祉など、幅広い業種で被害が報告されています。

こうした統計から、ランサムウェアは一部の企業だけが警戒すればよい脅威ではないことがわかります。

中小企業もランサムウェアの標的になっている

ランサムウェア攻撃というと、大企業が被害に遭うイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際には中小企業でも多くの被害が発生しています。

警察庁の2026年上半期の統計では、被害報告123件のうち79件が中小企業で、全体の約64%を占めています。

中小企業では、専任の情報システム担当者がいないなど、セキュリティ対策に十分な人員や予算を確保できない場合があります。

また、取引先とのデータ共有やリモートアクセスなど、外部との接続が必要な業務も少なくありません。
こうした環境で機器の更新やアクセス管理が不十分になると、攻撃者に侵入の機会を与える可能性があります。

企業規模が小さいから狙われないのではなく、規模にかかわらず侵入される可能性があることを認識しておく必要があります。

データの暗号化だけではないランサムウェアの脅威

ランサムウェアは、企業のデータを暗号化して利用できなくし、復旧と引き換えに身代金を要求する攻撃として知られています。

しかし、近年はデータを暗号化する前に機密情報や個人情報を盗み出し、身代金を支払わなければ公開すると脅迫する「二重恐喝」と呼ばれる手口も使われています。
そのため、ランサムウェア被害は単なるデータの消失やシステム停止にとどまりません。

情報漏えいによる取引先や顧客への影響、業務停止による売上の減少、原因調査やシステム復旧にかかる費用など、企業活動のさまざまな部分に影響が及ぶ可能性があります。

バックアップがあれば安心というわけではなく、情報の流出や業務停止も含めた対策が必要です。

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対策していてもランサムウェア被害が発生する理由

セキュリティ対策を導入していても、ランサムウェアによる被害を完全に防げるとは限りません。
攻撃者は、企業のネットワークやシステムに残された弱点を探し、さまざまな方法で侵入を試みます。

特に注意したいのは、セキュリティ製品を導入していることと、実際に攻撃を防げる状態にあることは同じではないという点です。
ここでは、対策を実施していても被害が発生する主な理由を確認します。

VPN機器やリモートアクセス環境の弱点を狙われる

テレワークや外出先からの業務を可能にするVPN機器は、社外から社内ネットワークへ接続するために利用されています。
しかし、外部からアクセスできる仕組みであるため、攻撃者に狙われることがあります。

特に問題となるのが、VPN機器の脆弱性が修正されないまま放置されているケースです。
機器のメーカーが脆弱性を修正する更新プログラムを公開していても、企業側で適用していなければ、その弱点を悪用される可能性があります。

また、VPN機器だけでなく、リモートデスクトップなどの外部接続環境も、不適切な設定や管理によって侵入経路になることがあります。
VPNを導入しているから安全なのではなく、機器の更新や接続設定を適切に管理していることが重要です。

認証情報の悪用によって不正アクセスを許してしまう

ランサムウェア攻撃では、システムの脆弱性を悪用するだけでなく、正規の利用者のIDやパスワードを使って侵入する手口もあります。

フィッシングメールによって認証情報が盗まれたり、複数のサービスで使い回していたパスワードが流出したりすると、攻撃者に正規のログイン手段を与えてしまう可能性があります。
正しいIDとパスワードを使ったアクセスであっても、操作しているのが正規の利用者とは限りません。
攻撃者がログインに成功すれば、その利用者に与えられた権限の範囲で情報を閲覧したり、システムへのアクセスを試みたりすることができます。

パスワードだけに依存した認証や、必要以上に広いアクセス権限は、こうした攻撃による被害を拡大させる要因になります。

セキュリティ対策の導入後に管理が行き届かなくなる

セキュリティ対策は、導入した時点で完成するものではありません。システムや業務環境は日々変化しており、それに合わせた管理が求められます。

導入当初は適切に設定されていた機器でも、更新プログラムの適用が遅れれば、新たに発見された脆弱性が残ってしまいます。
人事異動によって不要になったアクセス権限や、新しく導入したクラウドサービスの管理漏れも、同様に注意が必要です。

こうした問題は、日常業務のなかで少しずつ蓄積し、気づかないうちにセキュリティ上の弱点を増やしてしまうことがあります。
対策を導入しているという安心感から運用状況の確認がおろそかになれば、本来期待していた防御効果を十分に発揮できなくなる可能性があります。

侵入を防ぐ対策だけでは被害の拡大を止められない

ランサムウェアによる被害の大きさは、最初の侵入が成功したかどうかだけで決まるわけではありません。
侵入された後、攻撃者がどこまで活動できるかによっても大きく変わります。

攻撃者は侵入した端末を足がかりに、社内ネットワークの別の端末やサーバーへアクセスを広げようとすることがあります。
管理者権限を奪われたり、ネットワークが適切に分離されていなかったりすると、複数のシステムに被害が及ぶおそれがあります。
さらに、不審な通信や操作を発見できなければ、情報の窃取やデータの暗号化が進むまで攻撃に気づかない可能性もあります。

侵入を完全に防ぐことだけを目指すのではなく、侵入後の活動を制限し、被害の拡大を食い止めることも重要です。

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ランサムウェア対策で見直したい4つのポイント

ランサムウェアによる被害を防ぐには、セキュリティ製品を導入するだけでなく、日常的な管理や運用が適切に行われているかを確認することが重要です。

すべての対策を一度に強化することが難しい場合でも、現在の対策にどのような弱点が残っているのかを把握し、優先順位をつけて改善することはできます。

ここでは、中小企業が確認しておきたい4つのポイントを紹介します。

VPN機器やシステムの更新状況を確認する

VPN機器やサーバー、業務システムには、運用開始後に新たな脆弱性が発見されることがあります。メーカーから修正プログラムが提供されても、適用されなければ攻撃者に悪用される可能性が残ります。

まず確認したいのは、社内で利用している機器やシステムを把握できているか、必要な更新が適用されているかという点です。

VPN機器など外部から接続できる機器は、攻撃の入口になりやすいため、優先的に確認する必要があります。更新プログラムの適用だけでなく、不要な接続機能が有効になっていないか、サポートが終了した機器を使い続けていないかも確認しましょう。

更新作業による業務への影響を考慮しつつ、脆弱性の深刻度や悪用状況に応じて、速やかに対応できる運用体制を整えておくことが大切です。

多要素認証とアクセス権限を見直す

IDとパスワードだけに依存した認証では、認証情報が盗まれた場合に不正ログインを許してしまうおそれがあります。

そのリスクを減らす方法の一つが、パスワードに加えて認証アプリなどを利用する多要素認証(MFA)の導入です。VPNやクラウドサービス、管理者アカウントなど、重要なシステムへのアクセスから優先的に導入を検討しましょう。

同時に見直したいのが、従業員に付与されているアクセス権限です。

業務に必要な範囲を超えて権限が付与されていると、アカウントが悪用された際に被害が広がる可能性があります。部署異動や担当業務の変更によって不要になった権限も、定期的な確認が必要です。

多要素認証によって不正ログインのリスクを減らし、アクセス権限の最小化によって侵入後の被害拡大を抑える。 この両方を意識することが重要です。

不審な動きを早期に発見できる体制を整える

ランサムウェア攻撃では、侵入直後にデータが暗号化されるとは限りません。
攻撃者が内部のシステムを調査し、権限の取得や情報の窃取を進めてから、暗号化を実行するケースもあります。

こうした活動を早期に発見するためには、不審なログインや通常とは異なる通信、端末上の不審な操作を検知できる仕組みが必要です。

端末の不審な挙動を検知するEDRなどのセキュリティ製品も有効な選択肢ですが、導入するだけで十分とはいえません。
検知した情報を誰が確認し、異常が見つかった場合にどのように対応するのかまで決めておく必要があります。

専任のセキュリティ担当者を配置することが難しい企業では、外部の監視サービスなどを活用する方法もあります。
重要なのは、異常を検知できることだけでなく、検知した後に速やかに対応できる状態をつくることです。

バックアップの保護と復元手順を確認する

ランサムウェアに感染してデータが暗号化された場合、バックアップは業務を復旧するための重要な手段になります。
しかし、バックアップを取得していても、そのデータが攻撃者によって削除・暗号化されてしまえば、復旧に利用できない可能性があります。

そのため、バックアップデータを通常の業務システムから分離して保管し、攻撃の影響を受けにくい状態にすることが重要です。
オフライン保管や、一定期間は変更・削除できない仕組みの活用も有効です。

また、バックアップが正常に取得されていることと、実際にデータを復元できることは同じではありません。
定期的に復元テストを実施し、必要なデータを戻せるか、復旧にどの程度の時間がかかるかを確認しておきましょう。

バックアップは取得するだけでなく、保護されていることと、必要なときに復元できることまで確認する必要があります。

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被害をゼロにできない前提で備えることも重要

ランサムウェア対策では、侵入を防ぐことに加えて、万が一被害が発生した場合の対応も考えておく必要があります。

どれだけ対策を強化しても、サイバー攻撃のリスクを完全になくすことはできません。
被害が発生してから対応を考え始めると、判断の遅れによって影響が広がる可能性があります。

被害を最小限に抑え、できるだけ早く業務を再開するためには、平時から対応手順を準備しておくことが重要です。

感染が疑われたときの初動対応を決めておく

ランサムウェアへの感染が疑われた場合、最初の対応が被害の拡大を左右することがあります。

不審なファイルの暗号化や身代金要求の画面が確認されたとき、誰に報告し、どのような対応を取るのかが決まっていなければ、対応が遅れるおそれがあります。

まずは、異常を発見した従業員が速やかに報告できる連絡体制を整えておきましょう。
あわせて、情報システム担当者や経営層、外部の保守事業者など、対応に関わる関係者の役割を明確にしておくことが必要です。

感染が疑われる端末やシステムについては、被害拡大を防ぐためのネットワーク隔離などを検討します。
ただし、状況を確認せずに電源を切ったり、データを削除したりすると、原因調査に必要な情報が失われる可能性があります。

従業員が自己判断で対応するのではなく、あらかじめ決めた連絡先や手順に従って行動できる状態を目指しましょう。

業務停止を想定して復旧の優先順位を整理する

ランサムウェアによって複数のシステムが利用できなくなった場合、すべての業務を同時に復旧することは難しい場合があります。
そのため、どの業務を優先して再開する必要があるのか、あらかじめ整理しておくことが重要です。

顧客対応や受発注、製造・出荷など、停止すると事業への影響が大きい業務を洗い出し、それぞれに必要なシステムやデータを確認します。
あわせて、システムが復旧するまでの間、手作業や代替手段で業務を継続できるかも検討しておくとよいでしょう。
こうした準備は、ランサムウェア対策だけでなく、災害やシステム障害への備えにもつながります。

復旧の優先順位と代替手段を事前に決めておくことで、被害発生時の判断を円滑にし、業務停止の影響を抑えやすくなります。

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まとめ|ランサムウェア対策は導入後の運用と見直しが重要

ランサムウェアによる被害は、大企業だけでなく中小企業にも広がっており、企業規模にかかわらず注意が必要です。
セキュリティ製品を導入していても、機器の脆弱性や認証情報の悪用、運用管理の不備などによって、攻撃者に侵入を許してしまう可能性があります。
そのため、ランサムウェア対策は「導入して終わり」ではなく、適切な運用と継続的な見直しが欠かせません。

VPN機器やシステムの更新、多要素認証、アクセス権限の管理、バックアップの保護など、現在の対策が十分に機能しているかを確認することが大切です。
さらに、侵入を完全に防ぐことが難しい以上、被害の早期発見や初動対応、復旧への備えも必要になります。

まずは自社のセキュリティ対策と運用状況を振り返り、改善が必要なところから取り組んでいきましょう。

自社のランサムウェア対策、見直してみませんか?

ランサムウェア対策では、セキュリティ製品の導入だけでなく、日常的な運用や管理体制の整備が重要です。
Synplanningでは、企業のIT環境や業務状況に応じた情報セキュリティ対策の検討・見直しを支援しています。
「現在の対策で十分なのかわからない」「何から見直せばよいか迷っている」という場合は、お気軽にご相談ください。