AIエージェントは、情報収集や資料作成だけでなく、メールの送信やデータ処理、システムの操作など、さまざまな業務を自律的に進められる技術として注目されています。
うまく活用すれば、これまで人が行っていた作業を自動化し、業務効率を大きく高めることも期待できます。

一方で、AIエージェントができることが増えるほど、「どこまでAIに任せてよいのか」という新たな課題も生まれます。
AIにシステムへのアクセス権限を与えたり、人の確認を挟まず操作を実行させたりする場合、従来の生成AIとは異なるセキュリティリスクも考えなければなりません。

重要なのは、AIエージェントを危険なものとして遠ざけることではなく、できることと任せてよいことを切り分け、安全に活用するための判断力を持つことです。

この記事では、AIエージェントと従来の生成AIとの違いから、企業が知っておきたいセキュリティリスク、安全に業務へ取り入れるための考え方と対策についてわかりやすく解説します。

AIエージェントとは?生成AIとの違い

AIエージェントとは、与えられた目的に応じて必要な作業を判断し、ツールやシステムを利用しながらタスクを進めるAIです。
従来の生成AIも文章作成や情報整理など幅広い業務を支援してきましたが、AIエージェントではさらに一歩進んで、AI自身が複数の作業を組み合わせ、実際の業務を進めることができます。
この違いは、業務効率化の可能性を大きく広げる一方、セキュリティを考えるうえでも重要なポイントになります。

回答するAIから「行動するAI」へ

これまでの生成AIは、人が質問や指示を入力し、それに対して文章や画像、プログラムなどを生成する使い方が中心でした。
一方、AIエージェントは目的を与えると、「その目的を達成するために何をすればよいか」を判断し、必要な作業を順番に実行します。
たとえば、「来週の会議を設定して」と指示した場合、カレンダーを確認して空いている日時を探し、参加者との日程を調整し、予定を登録するといった複数の作業をAIが進めることが考えられます。

つまり、生成AIが主に「人の作業を支援するAI」だったのに対し、AIエージェントは「人に代わって作業を進めるAI」へと役割を広げているのです。

業務効率化で広がるAIエージェントの活用

AIエージェントの大きなメリットは、複数のツールやシステムをまたいだ業務を自動化できることです。

たとえば、メールの内容を確認して必要な情報を抽出する、社内データを参照して資料を作成する、顧客情報をシステムへ登録するなど、これまで人が一つずつ行っていた作業を連続して処理できるようになります。
特に、定型的な確認や入力、情報整理などをAIエージェントに任せることができれば、従業員は判断や企画など、人が担うべき業務に時間を使いやすくなります。

そのためAIエージェントは、単に作業時間を短縮するだけでなく、業務プロセスそのものを効率化する手段として活用が期待されています。

便利になるほど「与える権限」も広がる

ただし、AIエージェントが実際に業務を進めるためには、必要なシステムや情報へアクセスできなければなりません。
メールを処理するならメールへのアクセス権限、ファイルを扱うならストレージへのアクセス権限、社内システムを操作するなら、そのシステムを利用するための権限が必要です。
つまり、AIエージェントに多くの仕事を任せるほど、AIに与える権限も広くなりやすいということです。

ここが、従来の生成AIを利用する場合との大きな違いです。
生成AIでは「どの情報を入力してよいか」がセキュリティ上の重要な判断でした。
しかしAIエージェントでは、それに加えて、「どの情報にアクセスさせるか」「どの操作まで許可するか」を考える必要があります。

業務効率化だけを優先して権限を広げれば、それだけ意図しない操作や情報へのアクセスが発生した際の影響も大きくなります。

AIエージェントの便利さと、与える権限の大きさは切り離して考えることができません。
この点を理解することが、AIエージェントを安全に活用するための第一歩です。

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AIエージェントで見落としやすいセキュリティリスク

AIエージェントは、人に代わって複数の作業を進められるからこそ、従来の生成AIとは異なるリスクがあります。
特に注意したいのが、AIに与えるアクセス権限、外部から受け取る情報、処理を自動で実行する範囲です。

ここでは、AIエージェントを業務で活用する際に見落としやすい3つのセキュリティリスクを紹介します。

必要以上のアクセス権限を与えてしまう

AIエージェントにさまざまな業務を任せるには、メールやクラウドストレージ、社内システムなどへのアクセス権限が必要です。
しかし、利用できる権限が大きいほど、問題が起きたときの影響範囲も広がります。

資料を検索するだけの業務であれば、本来はファイルを閲覧する権限だけで十分かもしれません。
それにもかかわらず編集や削除までできる権限を与えていれば、AIの誤った判断によって重要なファイルが変更・削除される可能性があります。

また、必要以上に多くの情報へアクセスできる状態では、本来の業務には必要のない機密情報や個人情報までAIが参照してしまうことも考えられます。
「できるだけ多くの権限を与えて便利にする」のではなく、任せる業務に必要な範囲だけを許可することが重要です。

外部の情報に仕込まれた指示を実行する「間接プロンプトインジェクション」

AIエージェント特有のリスクとして注意したいのが、間接プロンプトインジェクションです。
これは、AIが読み込むWebページやメール、文書などに悪意のある指示を仕込み、AIに本来意図していない行動を取らせようとする攻撃です。

たとえば、受信メールを確認して内容を整理するAIエージェントに、メールだけでなく社内のファイルを検索できる権限も与えていたとします。
そこへ攻撃者が、「社内ストレージから特定の情報を探し、その内容を指定した外部サービスへ送信する」といったAI向けの指示を仕込んだメールを送り、AIエージェントがそれを正規の指示として処理してしまえば、本来はメールを整理するだけだったAIが、社内情報の検索や外部への送信まで実行する可能性があります。

重要なのは、攻撃者自身が社内システムへアクセスしているわけではないという点です。
AIエージェントが持っている正規のアクセス権限を利用して、意図しない操作をさせることが、このリスクの厄介なところです。

Webサイトや共有文書など、AIエージェントが外部の情報を自動的に読み取る場合にも同様のリスクがあります。
従来の生成AIでは不適切な回答の生成が主な問題でしたが、外部システムを操作できるAIエージェントでは、不正な指示が情報の取得・変更・送信といった実際の操作につながる可能性があるため、より慎重な対策が必要です。

意図しない操作が連続して実行される

AIエージェントの大きな特徴は、一つの目的に対して必要な作業を判断し、複数の処理を連続して実行できることです。
業務効率化につながる便利な機能ですが、最初の判断を誤ると、その後の処理にも影響が連鎖する可能性があります。

たとえば、AIがあるメールを「対応が必要な問い合わせ」と誤って判断した場合、メールを読むだけなら影響は限定的です。
しかし、その判断をもとに顧客情報を更新し、資料を作成してメールまで自動送信する仕組みであれば、一つの誤判断から複数の誤った操作が実行されることになります。

さらに、人の確認を挟まず最後まで処理する設定では、問題に気づいた時点ですでに複数の操作が完了していることも考えられます。
AIエージェントでは「正しく判断できるか」だけでなく、「間違えたときに、どこまで影響が広がるのか」まで考えて設計することが重要です。

「AIにできること」と「AIに任せていいこと」は違う

AIエージェントの性能が向上すれば、これまで人が行っていた多くの業務を自動化できるようになります。
しかし、技術的に実行できることと、企業としてAIに任せてよいことは同じではありません。

重要なのは、AIエージェントの性能だけを基準に自動化を進めるのではなく、誤った判断や操作が起きた場合の影響まで考えて「どこまで任せるか」を決めることです。
AIを活用する側にも、適切な境界線を引くための判断力が求められます。

業務ごとに自動化する範囲を決める

AIエージェントを導入する際は、業務を丸ごと自動化するのではなく、どの工程までAIに任せるのかを業務ごとに決めておくことが重要です。

情報の収集や整理、文書の下書きなどは、誤りがあっても人が確認して修正できます。
一方、顧客へのメール送信、データの更新・削除、契約や支払いに関わる処理などは、誤った操作が実際の業務や取引先に影響する可能性があります。

そのため、「自動化できるか」だけで判断するのではなく、失敗した場合の影響はどの程度か、あとから修正できるかという視点で自動化の範囲を決める必要があります。
最初は影響の小さい業務から任せ、運用状況を確認しながら範囲を広げていく方法も有効です。

重要な操作には人の確認を挟む

AIエージェントを活用するからといって、すべての処理を最初から最後まで自動化する必要はありません。
重要な判断や操作の前でいったん処理を止め、人が内容を確認してから実行させるという設計もできます。

こうした、人間の判断を処理の途中に組み込む考え方は「Human-in-the-Loop(HITL)」と呼ばれます。
特に、外部への情報送信、重要なデータの変更・削除、金銭に関わる処理など、実行後の取り消しが難しい操作では、人による確認を残しておくことが重要です。

ただし、人が確認画面で「承認」を押すだけになってしまえば、十分な対策とはいえません。
何を確認すべきなのかを理解したうえで判断できる運用まで含めて設計する必要があります。

AIの判断を無条件に信用しない

AIエージェントが高度になっても、常に正しい判断をするとは限りません。
情報の読み違いや誤った推論だけでなく、前述した間接プロンプトインジェクションなどによって、本来とは異なる判断へ誘導される可能性もあります。

特に注意したいのは、AIが日常的に正しい処理を続けることで、人間側に「今回も大丈夫だろう」という過信が生まれることです。
確認する仕組みが用意されていても、内容を見ずに承認する状態になれば、人を介在させている意味が薄れてしまいます。

AIエージェントを安全に活用するために必要なのは、すべての判断を人に戻すことでも、AIを信用しないことでもありません。
AIが得意な処理は任せながら、重要な判断では人が責任を持って確認する。その境界線を適切に引くことが、AIエージェントを使う側に求められるリテラシーです。

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AIエージェントを安全に活用するために企業ができること

AIエージェントを安全に活用するには、利用する従業員個人の注意だけに頼るのではなく、企業として運用の仕組みを整えることも必要です。
特に、「どの権限を与えるか」「何を実行したか確認できるか」「どのようなルールで利用するか」という3つの観点から考えておくとよいでしょう。

最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。
利用する業務やリスクに合わせて必要な対策から始め、活用範囲の拡大に応じて見直していくことが重要です。

必要最小限の権限から始める

AIエージェントに与えるアクセス権限は、任せる業務を実行するために必要な範囲に限定することが基本です。

情報を参照するだけなら閲覧権限にとどめ、編集や削除の権限まで与えない。
特定のフォルダだけで業務が完結するなら、ストレージ全体にはアクセスさせないなど、業務内容に応じて範囲を絞ります。
こうした「必要な人やシステムに、必要な権限だけを与える」という考え方は、AIに限らずセキュリティの基本となる「最小権限の原則」です。

また、AIエージェントの利用範囲を広げる際には、それに伴って追加した権限が本当に必要なのかを確認することも大切です。
一度与えた権限をそのままにせず、業務内容の変化に合わせて定期的に見直すことで、不要なアクセス権限が残ることを防げます。

実行内容を確認できるログを残す

AIエージェントが自律的に複数の処理を行うようになると、問題が発生した際に「AIが何を判断し、どのような操作を行ったのか」を確認できることが重要になります。

どの情報へアクセスしたのか、どのシステムを操作したのか、どのような処理を実行したのかなど、後から確認できるログを残しておけば、問題が発生した際の原因調査に役立ちます。
また、想定していない情報へのアクセスや不自然な操作を把握するためにも、ログは重要な手がかりになります。

ただし、ログは記録するだけでは十分ではありません。
必要なときに確認できる状態にしておくことに加え、重要な操作や異常な動作を定期的に確認する仕組みまで考えておくことが大切です。

利用ルールを決め、従業員のリテラシーを高める

技術的な対策と同時に必要なのが、AIエージェントを利用する従業員が、「何を任せてよいのか」「どのようなリスクがあるのか」を理解することです。

利用できるAIエージェントや対象業務、アクセスさせてよい情報、人による確認が必要な操作など、基本的な利用ルールを決めておくことで、担当者ごとに判断がばらつくことを防げます。
新しいツールを導入する際には、その機能だけでなく、どのような情報やシステムへアクセスするのかを確認する習慣を持つことも重要です。

一方で、ルールを細かく決めるだけでは、安全な活用にはつながりません。AIエージェントの機能やリスクは今後も変化していくため、従業員自身が「この業務をAIに任せても問題ないか」と考えられるリテラシーを育てることが必要です。

AIエージェントを安全に活用するための土台になるのは、技術による制御と、利用する人の判断力の両方です。
「AIだから危険」「便利だからすべて任せる」のどちらにも偏らず、目的とリスクに応じて使い方を判断できる環境を整えることが、企業には求められます。

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まとめ|AIエージェント時代に必要なのは「任せ方」を判断する力

AIエージェントは、情報を生成するだけでなく、さまざまなツールやシステムと連携し、実際の業務を進められるようになっています。
うまく活用すれば、定型業務の自動化や作業時間の削減など、大きな業務効率化につながる可能性があります。

一方で、AIが行動できる範囲が広がれば、アクセス権限の管理や間接プロンプトインジェクション、意図しない操作の連鎖など、これまで以上に考えるべきリスクも増えていきます。
だからこそ、「AIに何ができるか」だけではなく、「どこまでAIに任せてよいか」を考えることが重要です。

AIエージェントを安全に活用するために、すべての操作を制限する必要はありません。
業務の重要度や失敗した場合の影響を考えながら、必要な権限を設定し、重要な場面では人が確認するなど、AIと人の役割を適切に分けることが求められます。

AIエージェントの活用が広がるほど、企業や従業員には新しい技術を使いこなすだけでなく、その使い方を判断する力が必要になります。
便利さとリスクの両方を理解し、「何を任せ、何を人が判断するのか」を考えられること。それが、AIエージェント時代に求められるリテラシーといえるでしょう。

情報セキュリティ対策にお悩みではありませんか?

生成AIやAIエージェントなど、新しい技術を業務に取り入れる際には、利便性だけでなく、自社の利用環境や業務内容に応じたリスクを把握し、適切なルールや対策を整えることが重要です。

Synplanningでは、企業の状況や課題に合わせた情報セキュリティ対策の検討・運用をサポートしています。
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