企業の業務に欠かせないシステムやクラウドサービス。災害やシステム障害などによってITが利用できなくなった場合に備え、IT-BCPを策定している企業もあるでしょう。
しかし、計画や手順を整えていても、緊急時にその通り対応できるとは限りません。担当者が不在だったり、必要な情報を確認できなかったりと、実際に動いてみて初めて気づく課題もあります。

そこで重要になるのが、IT-BCP訓練によって「実際に対応できるか」を確認することです。
大掛かりな訓練を行わなくても、想定したシナリオをもとに対応を確認する「机上訓練」なら、中小企業でも比較的取り組みやすいでしょう。この記事では、IT-BCP訓練の目的や種類を整理したうえで、中小企業でも始められる机上訓練の具体的な進め方を解説します。

IT-BCPは「作る」だけでは機能しない

IT-BCPでは、災害やシステム障害などが発生した場合に備えて、重要な業務や復旧の手順、緊急時の連絡方法などを整理します。
しかし、計画を作っただけでは、実際の緊急時にその通り対応できるとは限りません。

たとえば、必要な情報の保管場所を知っている担当者が不在だったり、緊急連絡先が更新されていなかったりすれば、初動対応が遅れる可能性があります。
また、手順としては決まっていても、実際に誰が判断し、どのような順番で対応するのかが曖昧なケースもあります。

こうした計画と実際の対応とのギャップを見つけるために必要なのが、IT-BCP訓練です。
定期的に訓練を行い、実際に対応できるかを確認することで、IT-BCPの実効性を高めていくことができます。

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IT-BCP訓練とは?主な種類と確認するポイント

IT-BCP訓練とは、災害やシステム障害、サイバー攻撃などによってITが利用できなくなった状況を想定し、事前に定めた対応や手順が実際に機能するかを確認する取り組みです。
訓練の目的は、計画通りに対応することだけではなく、実際に試すことで課題や不足を見つけることにあります。

訓練にはいくつかの方法があり、確認したい内容や自社の体制に合わせて選ぶことが重要です。
ここでは、主な訓練の種類と確認しておきたいポイントを紹介します。

IT-BCP訓練の主な種類

IT-BCP訓練は、大きく分けると次のような方法があります。

  • 机上訓練
    想定したシナリオをもとに、参加者が「どのように判断し、対応するか」を話し合いながら確認する
  • 連絡訓練
    緊急連絡網や安否確認などを実際に使用し、必要な相手へ連絡できるかを確認する
  • 実動訓練
    システム障害などを想定し、バックアップからの復旧や代替手段への切り替えなど、実際の操作を伴う対応を確認する

すべてを一度に実施する必要はありません。
まずは自社が確認したいことを明確にし、無理なく実施できる方法から始めることが大切です。

訓練で確認したい4つのポイント

訓練を行う際には、単に手順をなぞるだけでなく、「実際にこの状況が起きても対応できるか」という視点で確認することが重要です。
特に、次の4つのポイントを確認しておきましょう。

  • 初動対応と役割分担
    誰が状況を確認し、誰が判断・指示を行うのか
  • 緊急時の連絡・情報共有
    必要な相手へ連絡できるか、通常の連絡手段が使えない場合の代替手段があるか
  • 重要業務の継続と優先順位
    どの業務を優先して継続・復旧するのか、関係者で認識を共有できているか
  • 復旧に必要な情報や手順
    システム情報や連絡先、バックアップ、復旧手順などを必要なときに確認できるか

こうしたポイントを訓練によって確認することで、計画上は問題がなくても、実際には対応が難しい部分を具体的に把握できます。

中小企業は「机上訓練」から始めよう

IT-BCP訓練というと、実際にシステムを停止させたり、大人数で訓練を実施したりするイメージがあるかもしれません。
しかし、最初から大掛かりな訓練を行う必要はありません。
特に中小企業では、関係者が集まり、想定したシナリオに沿って対応を確認する「机上訓練」から始める方法が取り組みやすいでしょう。

机上訓練では実際にシステムを停止させる必要がないため、通常業務への影響を抑えながら実施できます。
また、「障害が発生したら最初に誰へ連絡するか」「担当者が不在なら誰が判断するか」などを確認するだけでも、計画上では気づかなかった課題が見えてきます。

重要なのは、大規模な訓練を実施することではなく、自社のIT-BCPが実際に機能するかを確かめることです。
まずは無理なく実施できる机上訓練から始め、自社の課題を把握していきましょう。

IT-BCPの机上訓練を実施する4つのSTEP

机上訓練は、シナリオを用意して話し合うだけでも始められますが、実施する目的や確認するポイントが曖昧だと、単なる意見交換で終わってしまう可能性があります。
「何が起きたか」「誰が対応するか」「どのように判断するか」を具体的に設定し、実際の業務を想定して進めることが重要です。

ここでは、中小企業でも取り組みやすいIT-BCPの机上訓練について、基本的な進め方を4つのSTEPに分けて紹介します。

STEP1:想定するシナリオを決める

まずは、訓練で想定するトラブルを決めます。
最初から複雑なシナリオを作る必要はなく、自社で実際に起こる可能性があり、業務への影響が大きい状況を一つ選ぶところから始めましょう。

たとえば、「ランサムウェア感染によって社内システムが利用できない」「クラウドサービスの障害で重要なデータにアクセスできない」「地震による停電でオフィスや社内機器が利用できず、担当者も出社できない」といった状況が考えられます。
発生した事象だけでなく、「その結果、どの業務ができなくなるのか」まで設定しておくと、その後の対応を具体的に検討しやすくなります。

STEP2:参加者と役割を決める

シナリオを決めたら、訓練に参加するメンバーと役割を設定します。
IT担当者だけでなく、想定したシナリオによって影響を受ける部門や、対応を判断する立場の人にも参加してもらうことが重要です。

あわせて、訓練を進める進行役と、実際の緊急時に「状況を確認する人」「対応を判断する人」「社内外へ連絡する人」などを整理しておきます。
ここで役割が決まらない場合は、それ自体がIT-BCPにおける課題の一つです。
無理に正解を決めるのではなく、訓練後に見直す項目として記録しておきましょう。

STEP3:シナリオに沿って対応を確認する

参加者と役割が決まったら、設定したシナリオを提示し、「実際にこの状況が起きたらどうするか」を順番に確認していきます。

たとえば、誰が最初に障害を確認するのか、誰へ報告するのか、どの業務を優先するのか、必要な情報はどこにあるのかなど、実際の対応をイメージしながら進めます。
「担当者と連絡が取れない」「社内システムにアクセスできない」など、想定していた手順では対応できない状況が見つかった場合も、その場で解決することだけを目的にせず、課題として記録することが大切です。

STEP4:課題を洗い出してIT-BCPを改善する

机上訓練は、シナリオへの対応を確認したら終わりではありません。
訓練中に見つかった問題を整理し、IT-BCPや関連する手順・情報を改善するところまでが訓練の一連の流れです。

「担当者しか保管場所を知らない」「緊急連絡先が古い」「誰が復旧を判断するのか決まっていない」など、見つかった課題を具体的に整理し、対応方法や担当者を決めていきます。
一度ですべてを解決しようとせず、改善した内容を次回の訓練で改めて確認することで、IT-BCPを継続的に「実際に動ける計画」へ近づけていくことができます。

IT-BCP訓練では「災害時のIT停止」も想定しておこう

IT-BCPの訓練では、システム障害やサイバー攻撃だけでなく、地震などの災害によってITが利用できなくなる状況も想定しておくことが重要です。
災害時には、通信・インターネットが不安定になる、オフィスや機器が利用できなくなる、システムやクラウドが利用できなくなるといった問題が同時に発生する可能性があります。
さらに、IT担当者が出社できず、連絡が取れない状況も考えられます。

こうした状況では、システムを復旧する手順だけを決めていても、十分に対応できないことがあります。「必要な情報を確認できるか」「緊急時に連絡を取れるか」「出社できなくても対応できるか」など、実際の事業継続を意識して訓練することが大切です。

災害時のIT停止を考えると、IT部門だけで完結する問題ではないことも見えてきます。
防災とIT-BCPを切り離さず、関係する部門が連携して備えておくことが、非常時にも事業を継続するためのポイントです。

まとめ:訓練を繰り返して「実際に動けるIT-BCP」へ

IT-BCPは、計画を策定するだけで完成するものではありません。
訓練を通じて実際に対応できるかを確認し、見つかった課題を改善していくことで、非常時にも機能するIT-BCPに近づけることができます。

中小企業では、まずは大掛かりな訓練ではなく、想定したシナリオについて関係者で対応を確認する「机上訓練」から始めてみましょう。
システム障害やサイバー攻撃だけでなく、災害による停電や通信障害、出社できない状況なども想定することで、ITだけではなく事業全体の継続に必要な課題も見つけやすくなります。

重要なのは、一度の訓練ですべてを整えることではなく、訓練と改善を繰り返し、自社に合った「実際に動けるIT-BCP」を作っていくことです。
まずは身近なシナリオを一つ設定し、自社の対応を確認するところから始めてみてください。

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災害時には、システムや通信の停止だけでなく、オフィスに入れない、担当者と連絡が取れない、必要な情報を確認できないなど、さまざまな問題が同時に発生する可能性があります。

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