企業が情報セキュリティ対策を強化するなかで、従業員向けのセキュリティ研修は欠かせない取り組みです。
しかし実際には、「一度は実施したが、それきりになっている」「毎回準備が大変で継続できない」といった声が多く、定期的な開催が難しいという課題に直面している企業も少なくありません。
この背景には、研修担当者の過重な負担と、受講者側の学びにくさや継続の難しさの両方があります。
この記事では、研修が定着しない理由を「担当者側の課題」と「受講者側の課題」に分けて整理し、それぞれに対する実践的な解決策を紹介します。

【1】担当者の負担が大きすぎる
コンテンツ作成の時間・労力が膨大
セキュリティ研修をゼロから設計・準備しようとすると、思った以上に多くの時間とエネルギーがかかります。
特に情シスや人事など、他の業務と兼務している担当者の場合、研修準備が後回しになったり、精神的な負担が大きくなったりしがちです。
・最新情報の収集に時間がかかる
・社内向けにアレンジした資料作成が必要
・上司や他部署からの確認・修正指示が多い
など、1回の研修にかかる見えない手間が累積し、継続的な運用を難しくしています。
完璧主義が足かせになることも
「どうせやるなら質の高い研修を」と、内容を練り込みすぎてしまう担当者も少なくありません。
その結果、資料作成や関係者調整に過剰な時間がかかり、研修そのものの開催が滞ってしまうことも。

【2】受講者がついてこられない理由
受講しづらい形式・ツールが障壁に
企業の働き方や文化に合わない教育方法は、参加率や継続率の低下につながります。
・テレワーク主体なのに、対面研修を強行
・不慣れなオンラインツールを使用し、ログインから苦戦
・一方通行の座学スタイルで飽きてしまう
といった状況では、研修を「受けたい」と感じてもらうのは難しくなります。
内容が業務と結びついていない
研修内容が現場の実務と乖離していたり、抽象的で「結局、何が大事なのか」が見えにくかったりすると、受講者の理解・定着が進まず、モチベーションも上がりません。
・「なぜこの内容を学ぶのか」が伝わっていない
・実際の業務に活かせる場面が想像できない
・重要なポイントが散らばっていて頭に残らない
という声が出てしまうと、学びが一時的なものになってしまいます。
時期や時間が現実的でない
忙しい時期に長時間の研修を組まれたり、頻度が高すぎたりすると、受講者にとって研修が「負担のかかるイベント」になってしまいます。
こうしたスケジュール面の無理が、研修離れを引き起こす大きな要因です。

課題を乗り越えるための解決策
担当者の負担を軽減するには
- テンプレートやガイドラインの整備
共通フォーマットや構成ガイドを用意することで、「何から手をつければいいか分からない」状態を回避できます。 - 過去の研修資料のライブラリ化
過去のコンテンツを再利用・更新して活用することで、毎回ゼロから作る必要がなくなります。 - 外部パートナーの活用
一部の設計・制作を外注することで、担当者の工数を抑えつつ、質の高い研修が実現できます。 - 内容の共通化と最小限のカスタマイズ
全社共通のベース教材を作り、部門ごとの差分だけカスタマイズするなど、汎用性のある教材設計も有効です。
受講者に「参加したくなる」環境を整えるには
- 柔軟な開催形式の導入
対面・オンライン・ハイブリッド型など、自社の業務形態に合わせた方法を選びましょう。 - 実務に直結するコンテンツ設計
具体的な事例や、実際のセキュリティインシデントをもとにした演習など、「自分ごと化」できる内容を意識すると効果的です。 - 現実的なスケジュール設定
繁忙期を避け、短時間・少人数でも無理なく続けられる形式を取り入れましょう。必要に応じて複数回に分割して実施する方法もあります。

まとめ:継続できる仕組みが、強いセキュリティ文化を育てる
セキュリティ研修が継続できないのは、意識ややる気の問題ではなく、仕組みや設計に無理があることがほとんどです。
担当者の負担と、受講者の受けづらさ。
この2つの壁を超えるためには、「続けやすい設計」をあらかじめ組み込んでおくことが欠かせません。
- 研修の負担を減らす工夫(仕組み・再利用・外部活用)
- 受講者が無理なく学べる設計(形式・内容・スケジュール)
これらの対策を講じることで、企業として持続可能なセキュリティ教育の基盤が築けます。
結果として、全社的なセキュリティ意識の底上げにつながり、日々の業務や危機対応に強い組織づくりが実現できるはずです。
セキュリティ研修の設計やコンテンツ作成、定着に向けたサポートが必要な方は、ぜひ合同会社Synplanningまでお気軽にご相談ください。
現場に寄り添った視点で、無理なく続けられる研修体制づくりを一緒に考えていきます。