多くの組織がISMS認証取得を目指す一方で、「どこから手を付ければ良いのか」「どのように進めていけば良いのか」という具体的な進め方に悩む声も少なくありません。本記事では、ISMS認証取得の第一段階となる準備とプランニングについて、実務担当者の視点から具体的な進め方を解説します。

1. ISMS認証取得の準備
1-1. プロジェクトチームの編成
ISMS認証取得は、組織全体で取り組む必要のある大規模プロジェクトです。まずは、適切なプロジェクトチームを編成することから始めましょう。
プロジェクトを成功に導くためには、経営層をプロジェクトオーナーとし、情報セキュリティに関する知識とプロジェクト管理経験、部門間の調整能力、そして経営層との円滑なコミュニケーション能力を持つプロジェクトマネージャーを選定することが重要です。
1-2. 現状分析
次に、プロジェクトチームは組織の現状を詳細に分析します。
これには、既存のセキュリティ対策、ポリシー、過去のインシデント履歴、組織の強みと弱み、技術的な対策レベル、従業員の意識レベル、予算とリソースの状況など、多岐にわたる側面からの評価が含まれます。特に、ISMS要求事項とのギャップ分析を通じて、必要な改善項目を洗い出し、優先順位を設定する作業は、後の計画策定において重要な基盤となります。
1-3. 取得計画の策定
現状分析の結果を踏まえ、具体的な取得計画を策定します。
計画には、12〜18ヶ月程度の全体スケジュール、マイルストーン設定、各フェーズの期間、必要な人員数や外部コンサルタントの要否、予算配分、リスク管理(想定されるリスクの特定、対応策の検討、予備期間の確保)など、多岐にわたる要素を含める必要があります。

2. 適用範囲とリスク評価
2-1. 適用範囲の決定
ISMS認証取得において、適用範囲の決定は最も重要な判断の一つです。
範囲が広すぎると管理が困難になり、狭すぎると効果が限定的になるため、段階的なアプローチを採用し、管理しやすい範囲から始めて徐々に拡大していくことが推奨されます。
特に、情報セキュリティリスクが高い部門や顧客情報を扱う重要業務、システム開発・運用部門を優先的に含めるべきです。
また、適用範囲から除外する部分については、その理由を明確にし、審査時に合理的な説明ができるように準備しておく必要があります。
2-2. 情報資産の特定
組織が保有する情報資産を正確に把握することは、効果的なセキュリティ対策の基盤となります。
情報資産の特定は、電子データ、紙文書、システム、施設・設備など、組織内のすべての情報資産を洗い出し、機密性、完全性、可用性の3つの観点から重要度を評価するステップで進めます。
2-3. リスクアセスメント計画
特定した情報資産に対するリスクを評価するため、具体的な計画を立てます。リスクアセスメント計画では、組織の特性に合わせた評価基準の確立、適切な評価方法の選択(ワークショップ形式、インタビュー形式、チェックリスト形式など)、現実的な実施スケジュールの策定が重要です。

まとめ:準備とプランニングの重要性
ISMS認証取得における準備とプランニングは、プロジェクトの成否を左右する重要な段階です。準備不足のまま認証取得を急いだり、適用範囲を最初から広げすぎたり、形式的な現状分析で終わらせてしまうことは、よくある失敗のパターンです。これらの失敗を避けるためにも、十分な時間を確保し、組織の実態に即した計画を立てることが重要です。
次のステップに向けて
準備とプランニングが整ったら、いよいよ具体的な体制構築と文書整備に入ります。次回の基礎編Part2では、マネジメントシステムの具体的な構築方法、必要な文書体系の整備手順、従業員教育の効果的な進め方について詳しく解説します。
さいごに
ISMS認証取得は、組織の情報セキュリティ体制を強化する絶好の機会です。この機会を最大限に活かすためにも、まずはこの準備とプランニングの段階でしっかりとした土台を築きましょう。
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