企業がセキュリティに関する規約を作成する際に直面する課題である「規定内容の過不足」は、企業のセキュリティ体制に重大なリスクを生じさせる可能性があります。
適切な対策を講じなければ、規約が自社に合わないままとなり、リスクが増大する恐れがあります。
この問題の主な原因には、検討の工数が多すぎること、リサーチの不十分さ、セキュリティ対策の広範囲に対する理解の不足、そして規定内容が関係者に理解されていないことが挙げられます。
特に、雛形探しと安易な書き換えは、これらの問題を複合的に引き起こす要因となります。
本記事ではこれらの課題と解決法について詳しく見ていきます。
規定内容の過不足がある・自社に合った規定になっていない
企業が作成するセキュリティ規約の内容が自社に適切に合致していない場合、それはリスクの増大に繋がります。
この問題の背景には、「検討の工数・作成の工数が大きい」こと、そして「形だけやっておけばいいという判断」があります。
特に、インターネットなどで見つけた雛形をそのまま流用し、自社の状況に合わせて適切な修正を行わないケースは非常に危険です。
検討と作成のための時間と労力が膨大であるため、十分な調査が行われないことが多く、規定が不十分になる傾向があります。
また、セキュリティに関する専門知識を持つ人材が不足していたり、リソースが限定されていると、外部専門家に頼らざるを得ず、これがさらなる工数を発生させる要因となります。
しかし、外部専門家に丸投げした場合、自社の業務プロセスや特有のリスクが十分に反映されない可能性があります。
さらに、規約作成が形式的な義務として扱われると、実質的な内容に欠けることがあり、経営層の関与不足もそれを助長します。
短期的なコスト削減や迅速な対応が優先されると、規定が形骸化し、セキュリティ規約が企業の現場にフィットしないものとなります。
例えば、クラウドサービスを利用していない企業が、クラウドセキュリティに関する詳細な規定を雛形からそのまま流用しても意味がありません。
逆に、個人情報を大量に扱う企業が、雛形の基本的なデータ保護規定のみを適用した場合、重大なリスクを見過ごす可能性があります。
規定内容の過不足(一般的に必要な内容を網羅できていない)
セキュリティ規約は、しばしば一般的に必要とされる内容を網羅できていないことが問題となります。
これは主に「リサーチが適切にできていない」ことから起こります。
特に、古い雛形を使い続けている場合、最新の脅威や法規制に対応できていない可能性が高いです。
最新のセキュリティトレンドや業界標準(ISO 27001、NISTサイバーセキュリティフレームワーク、GDPRなど)を把握できていない場合、時代遅れの内容で作成される規約が、実際の脅威に対応できないことがあります。
また、自社の業務プロセスや特有のリスク(例えば、特定の業界規制、ビジネスモデル特有のリスク、サプライチェーンのリスクなど)を十分に理解していないと、会社の実状にそぐわない内容が策定されてしまい、セキュリティの実効性を欠く原因となります。
例えば、リモートワークを導入している企業であれば、リモートアクセスに関するセキュリティ規定を詳細に定める必要がありますが、雛形によってはこのような要素が欠落している場合があります。
セキュリティ対策の膨大さに対する正しい理解の欠如
セキュリティ対策には様々な要素が含まれますが、それらの全体を適切に理解できていないと、対策が適切に講じられないことがあります。
雛形はあくまで一般的な内容を網羅しているに過ぎず、個々の企業が直面するリスクを詳細に考慮しているわけではありません。
例えば、物理的セキュリティ、ネットワークセキュリティ、データ保護、インシデントレスポンス、従業員教育など多岐にわたる領域を包括的にカバーできないと、セキュリティ規約が不十分になります。
リスク評価が十分でないと、最も重要なリスクを見逃してしまい、重要な規定が欠如することになります。
専門知識が不足している場合は、その知識を補完するために外部専門家の協力を求めることも一つの方法です。
しかし、雛形に頼り、外部専門家への相談を怠ると、必要な対策が漏れてしまう可能性があります。
規定が理解されていない
規約が関係者に理解されていないと、その実効性は大きく損なわれます。
このようなことが起きる原因は、既存の雛形の内容をそのまま使用してしまうことにある場合が多いです。
なぜなら、雛形は専門用語が多く、一般の従業員には理解しにくい表現が使われていることがあるためです。
時間やリソースに制約があるために、詳細な検討を避けて雛形に頼ってしまうことがあります。
規約の作成が形式的な義務として扱われれば、重要な内容が欠けたままの状態で策定されてしまいます。
こうした背景には、経営層の理解や影響力の欠如があります。
経営層が雛形を鵜呑みにして、従業員への周知や教育を怠ると、規約は単なる文書に過ぎず、現場で活用されることはありません。
解決策
では、ここまで見てきた課題はどのように回避することができるのでしょうか。
プロジェクト管理の強化
規約作成プロセスをプロジェクトとして管理し、必要なリソースと時間(調査、レビュー、教育など)を確保することで、十分な検討と作成を行います。
経営層の積極的な関与
経営層がセキュリティの重要性を認識し、規約作成に積極的に関与することで、形骸化を防ぎます。
経営層が率先して規約の内容を理解し、従業員に説明する姿勢を示すことが重要です。
専門家の活用
必要に応じて外部の専門家を活用し、最新の知識や業界標準を取り入れることで、規定内容の充実を図ります。
ただし、外部専門家に丸投げするのではなく、自社の状況をしっかりと伝え、共同で規約を作成する姿勢が重要です。
定期的な見直し
規約を定期的に見直し(少なくとも年に一度)、企業の変化や新たなリスク、法規制の変更に対応することで、常に自社に合った内容を維持します。
従業員の意見を反映
規定作成のプロセスに従業員を巻き込み、現場の意見を反映させることで、実行可能で効果的な規定を作成します。アンケートやワークショップなどを活用し、現場の意見を吸い上げる仕組みを構築しましょう。
雛形の適切な活用
雛形はあくまで参考資料として活用し、自社の状況に合わせて大幅に修正することを前提とします。
雛形の内容を鵜呑みにせず、必要な要素を精査し、不足している要素を追加していく作業が不可欠です。
分かりやすい表現の使用
規約の内容は、専門用語を避け、平易な言葉で記述し、図やイラストなどを活用して、従業員が理解しやすいように工夫します。
これらの対策を講じることで、企業の実態に即した効果的で効率的なセキュリティ規約を作成し、セキュリティ体制を強化することが可能になります。
まとめ
セキュリティ規約作成の過程で生じる「内容の過不足」は、企業のリスク管理における重大な課題です。
特に、雛形探しと安易な書き換えは、これらの問題を深刻化させる要因となります。
リサーチの不足や、経営方針と一致しない規約作成は、セキュリティの実効性を欠く可能性があります。
この問題を解決するために、プロジェクト管理の強化、経営層の関与促進、専門家の活用、規約の定期的な見直し、従業員の意見の反映、雛形の適切な活用、分かりやすい表現の使用が求められます。
これにより、企業の特性に合った効果的なセキュリティ体制の構築が可能です。
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