SaaSは、導入のしやすさから業務改善の手段として広く使われています。
一方で、セキュリティについては「初期設定は済ませた」「MFAも入れている」といった状態で、そのまま運用が続いてしまうケースも少なくありません。

SaaSのセキュリティは、設定を入れた時点で完成するものではありません、
誰が・何を・どこまで判断し、運用するのかによって安全性が大きく変わります。

本記事では、細かな設定項目を網羅するのではなく、SaaS導入時に確認しておきたいセキュリティの考え方と判断ポイントを整理します。「設定したつもり」で終わらせないために、導入前後で一度立ち止まって確認してみてください。

SaaSは「入れた瞬間から安全」ではない

SaaSは、オンプレミス型のシステムと比べて、インフラの管理やセキュリティ対策をベンダー側が担ってくれる部分が多いサービスです。
そのため、「クラウドだから安全」「専門の会社が守ってくれるはず」という印象を持たれがちです。

ただし、SaaSのセキュリティはすべてをベンダーが守ってくれる仕組みではありません

多くのSaaSでは、
「どこまでがベンダーの責任で、どこからが利用企業の判断なのか」
という責任の分かれ目が存在します。

SaaSにおけるセキュリティの責任分界(考え方)

領域主な内容主な責任
インフラ・基盤サーバー管理、物理的セキュリティベンダー
サービス自体脆弱性対応、障害対応ベンダー
アカウント管理利用者の追加・削除自社
権限設定管理者・一般ユーザーの切り分け自社
利用ルールどこまで使ってよいかの判断自社

SaaSでは、技術的な安全性の多くはベンダーが担いますが、
「どう使うか」「誰に、どこまで使わせるか」は、自社の判断に委ねられています。この切り分けを意識しないまま導入すると、実際の運用が始まるとで想定外のリスクが生まれやすくなります。

SaaSは、導入した時点で完成するものではなく、自社の使い方に合わせて、安全性を形づくっていくサービスです。まずはこの前提を共有することが、セキュリティを考える第一歩になります。

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最低限おさえておきたいSaaSセキュリティの観点

ここで整理したいのは、「すべての設定を完璧にやる」ことではありません。
SaaSごとに機能や重要度は違うため、全部を同じ粒度で対応するのは現実的ではないからです。

まずは、導入時に判断の軸として最低限見ておきたい観点を押さえておくことが大切です。

認証・アクセス管理

SaaSを利用するうえで、最初に確認したいのが「誰が、どこから、そのサービスにアクセスできるのか」です。

MFA(多要素認証)を有効にすること自体は重要ですが、それだけで安全性が担保されるわけではありません。
利用者の範囲やアクセス条件が曖昧なままだと、設定は正しくても運用上のリスクが残ります。

管理者権限

SaaS導入時に見落とされやすいのが、管理者権限の扱いです。

初期設定の管理者がそのまま残っていたり、必要以上に強い権限が複数人に付与されていたりすると、トラブルが起きた際の影響範囲が大きくなります。

「誰が管理者なのか」「なぜその権限が必要なのか」を説明できる状態になっているかがポイントです。

ログ・監査

ほとんどの場合、日常的にログを細かく確認する必要はありません。
ただし、何かあったときに振り返れる状態かどうかは重要です。

  • どんな操作が記録されているのか
  • どれくらいの期間保存されているのか

このあたりを把握していないと、問題が起きたあとに原因を特定できず、判断が後手に回りがちです。

外部連携・API

SaaSは、他のサービスと連携することで便利になります。
一方で、外部連携は意図せず接点を増やす要因にもなります。

  • どのサービスと連携しているのか
  • いま使っていない連携が残っていないか

導入時点で把握しておくだけでも、あとからの見直しがしやすくなります。

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設定項目よりも見落とされがちな「運用」の話

SaaSのセキュリティは、設定を入れた時点で終わるものではありません。
むしろ、導入後の運用が決まっていないことのほうが、後から問題になりやすいポイントです。

たとえば、
「誰がその設定をしたのか分からない」
「しばらく見直していないが、現状がどうなっているか把握できていない」
といった状態は、珍しくありません。

誰が、いつ、設定を見直すのか

SaaSは、機能追加や仕様変更が頻繁に行われます。
導入時に問題がなくても、時間が経つにつれて自社の運用と設定が噛み合わなくなることがあります。
そのため、

  • 設定を見直すタイミング
  • 見直しの判断をする人

が決まっているかどうかは重要です。
完璧なルールである必要はありませんが、「何かあったときに誰が見るのか」が分かっている状態が理想です。

人事異動・退職時の対応

アカウントの整理は、運用の中でも特に後回しにされがちな作業です。担当者の異動や退職があった際に、アカウントの削除や権限の見直しが曖昧なままだと、不要なアクセス権が残り続けることになります。

これは設定ミスというより、運用として決まっていないことが原因で起こるケースがほとんどです。

ベンダー任せにしない視点

SaaSベンダーはサービスを安全に提供する責任を負っていますが、自社の業務や体制まで把握しているわけではありません。そのため、

  • どの機能を使っているのか
  • どこまでを許容しているのか

といった判断は、どうしても自社側で行う必要があります。

SaaSの運用では、「何か起きてから考える」のではなく、「考えたうえで使い続ける」という姿勢が大切です。

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すべてを自社で判断しなくてもいい理由

ここまで見てきたように、SaaSのセキュリティは設定項目そのものよりも、判断や運用の積み重ねによって形づくられます。
一方で、これらをすべて自社内だけでカバーし続けるのは、中小企業にとって現実的とは言えないケースも多いのが実情です。

情シス専任の担当者がいない、あるいは他業務と兼務している場合、セキュリティの情報収集や設定の見直しまで手が回らないことは珍しくありません。

すべてを内製しようとしなくていい

セキュリティは「できる人が全部やる」ものではなく、判断の材料を揃え、選択できる状態をつくることが重要です。

無理にすべてを内製しようとすると、

  • 属人化が進む
  • 判断が後回しになる
  • 問題が起きたときに責任の所在が曖昧になる

といった別のリスクが生まれます。

外部の知見を使うという選択肢

外部の専門家やサービスを活用することは、自社のセキュリティを「丸投げ」することではありません。

  • 自社で判断すべきポイントを整理する
  • 迷ったときに相談できる相手を持つ
  • 運用を定期的に見直すきっかけをつくる

こうした関わり方であれば、限られたリソースの中でも無理なくセキュリティを維持できます。

「任せる」と「丸投げ」は違う

重要なのは、自社として何を把握し、何を判断するのかを手放さないことです。
外部の知見を使いながらも、最終的な判断の軸を自社が持っていればセキュリティは「負担」ではなく「運用の一部」として回り続けます。

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まとめ|SaaSセキュリティは「導入作業」ではなく「運用設計」

SaaSのセキュリティは、設定項目をどれだけ入れたかではなく、自社として何を判断し、どう運用するかで差が出ます。

ベンダーが守ってくれる範囲と、自社が判断すべき範囲を整理して最低限どこを確認し、どう運用していくのかを整理しておくことが重要です。

すべてを完璧に把握する必要はありません。
ただ、

  • 誰が見ているのか
  • 何を判断しているのか
  • どこで相談できるのか

この3点が見えていれば、
SaaSセキュリティは無理なく続けられます。

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