地震や台風などの災害に備えるとき、まず重要になるのは、従業員の避難や安否確認などの人の安全を守るための備えです。

しかし、企業にとっての災害対応は、人の安全を確保したところで終わるわけではありません。
その後には、会社の業務をどう続けるのかという課題が残ります。
パソコンが使えない、インターネットにつながらない、必要なデータにアクセスできない、オフィスに出社できない――。
人が無事であっても、業務を支えるITが利用できなければ、事業を継続することが難しくなる場合があります。

そこで考えておきたいのが、ITの視点から事業継続に備えるIT-BCPです。
この記事では、企業防災から一歩進んで、なぜIT-BCPが必要なのか、災害時にどのような問題が起こり得るのか、そして何から考え始めればよいのかを分かりやすく解説します。

企業の防災は「人の安全確保」で終わらない

企業が災害に備えるうえで、従業員の安全を守ることは最優先です。
一方で、企業には安全を確保したあとも、事業を継続し、必要に応じて復旧していくことが求められます。
そのため企業の防災を考える際には、災害発生直後の安全確保だけでなく、その後の事業継続まで視野に入れておくことが重要です。

まず優先すべきは従業員の安全と安否確認

災害が発生した直後に優先すべきなのは、従業員や来訪者などの安全を確保することです。
避難経路や避難場所をあらかじめ確認し、状況に応じて安全な場所へ避難できるよう備えておく必要があります。

同時に重要になるのが、従業員の安否を確認できる体制です。
電話やメールが利用できない可能性も考慮し、誰が、どのような手段で安否を確認するのかを事前に決めておくと、災害発生時の混乱を抑えやすくなります。

まず人の安全を守る。
この点は、企業が災害対応を考えるうえで変わらない大前提です。

安全を確保したあとに「事業継続」の課題が残る

従業員の安全を確認できても、すぐに通常どおり仕事を再開できるとは限りません。
オフィスに入れない、取引先と連絡が取れない、業務に必要なシステムが使えないなど、人が無事でも事業を続けられない状況は十分に考えられます。

さらに、業務停止が長引けば、顧客へのサービス提供や取引先とのやり取り、売上などにも影響が広がる可能性があります。
だからこそ、安全確保の次には、重要な業務をどのように継続し、停止した場合にはどう復旧するのかまで考えておく必要があります。

防災とBCP(事業継続計画)は何が違う?

防災とBCPは、どちらも災害への備えに関係していますが、重視する目的が異なります。
防災では、人命の保護や建物・設備などの被害をできるだけ抑えることが中心になります。
一方、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、災害や事故などが発生した場合でも、重要な業務を継続したり、できるだけ早く復旧したりするための計画です。

つまり、防災が人や設備を守るための備えだとすれば、BCPはその備えを土台として、事業をどう続けるかまで考えるものと整理できます。
企業の災害対策では、どちらか一方を選ぶのではなく、防災から事業継続までをつなげて考えることが重要です。

災害時、会社のITには何が起こる?

災害によって業務が止まる原因は、建物や設備の被害だけではありません。
現在の企業活動では、メールやクラウドサービス、業務システムなど、さまざまなITが日常業務を支えています。
そのため、ITそのものが故障していなくても、利用するための環境が失われることで業務が止まる可能性があります。災害時に想定される代表的なケースを見てみましょう。

パソコンや社内設備が使えなくなる

地震や浸水などによって、パソコンやサーバー、ネットワーク機器などが物理的に損傷する可能性があります。
また、機器自体に被害がなくても、停電が発生すれば利用できない場合があります。

特に、特定のパソコンや社内設備でしか行えない業務がある場合、一つの機器が使えなくなるだけで業務全体が止まってしまうこともあります。
どのような機器や設備が日常業務を支えているのか、平時から把握しておくことが重要です。

インターネットや業務システムに接続できなくなる

クラウドサービスを利用していれば、社内にサーバーを設置していなくても業務を行えます。
しかし、災害によって通信回線に障害が発生すれば、サービスそのものが稼働していてもアクセスできません。

また、自社の環境に問題がなくても、利用しているサービスやデータセンターなどの障害によって業務システムが利用できなくなる可能性もあります。
ITサービスが利用できることだけでなく、そこへ接続する手段まで含めて考える必要があります。

必要なデータや情報にアクセスできなくなる

顧客情報や契約書、受発注情報、業務マニュアルなど、仕事を進めるために必要な情報の多くがデジタルで管理されています。
データ自体が失われていなくても、保存している端末やシステムが利用できなければ、必要なときに情報を確認できません。

データが存在していることと、必要なときに利用できることは別の問題です。
災害時にどこから、どのように必要な情報へアクセスするのかも考えておく必要があります。

オフィスに出社できず業務を続けられなくなる

会社のIT設備が無事でも、交通機関の停止や建物への立ち入り制限などによって、従業員がオフィスへ出社できないことがあります。
社内からしか利用できないシステムや、オフィスにある端末でしか行えない作業が多ければ、出社できないこと自体が業務停止の原因になります。

災害時のIT対策では、機器やデータを守るだけではなく、人がどこから、どのように業務を続けられるのかまで考えておくことが重要です。

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防災のその先に必要な「IT-BCP」とは

ここまで見てきたように、災害時にはさまざまな理由でITが利用できなくなる可能性があります。
そして現在、多くの企業では、ITが使えなくなることがそのまま業務の停止につながります。

そこで必要になるのがIT-BCPという考え方です。
IT-BCPとは、災害やシステム障害などが発生した場合に備え、事業継続に必要なIT環境の維持や復旧についてあらかじめ計画しておくことを指します。

IT-BCPはITを止めないためだけの計画ではない

IT-BCPという言葉から、システムやサーバーを止めないための対策をイメージするかもしれません。
しかし、あらゆるITを常に稼働させ続けることだけが目的ではありません。

重要なのは、事業を継続するために必要なITは何かを把握し、優先順位をつけて備えることです。
たとえば、すべてのシステムを同時に復旧させることが難しい場合でも、重要な業務に必要なシステムやデータを優先して利用できるようにすれば、事業への影響を抑えられる可能性があります。
ITそのものを守ることを目的にするのではなく、事業を続けるためにITをどう維持・復旧するかを考えることがIT-BCPの基本です。

防災とIT-BCPは「人を守る」から「事業を続ける」へつながっている

防災とIT-BCPは、それぞれ独立した取り組みではありません。

まずは避難や安否確認によって人の安全を確保する。
そのうえで、重要な業務をどのように続けるのかを考え、その業務を支えるITについても備えておく。
この一連の流れとして捉えることが大切です。

つまり、人を守るための防災と、事業を続けるためのIT-BCPは連続した備えといえます。
災害が起きてから「何を復旧すればよいのか」を考えるのではなく、平時から事業とITの関係を整理しておくことが、その後の対応をスムーズにする第一歩になります。

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IT-BCPは「何が止まると困るか」の整理から始める

IT-BCPを考えるとき、最初からすべてのシステムやデータについて対策を整えようとすると、何から手をつければよいのか分からなくなりがちです。
まず考えたいのは、自社の業務のうち、止まると大きな影響が出るものは何かということです。
重要な業務を整理したうえで、それを支えるITを確認すると、優先して備えるべき対象が見えやすくなります。

まずは事業継続に必要な重要業務を整理する

企業には、営業、受発注、顧客対応、経理など、さまざまな業務があります。
そのすべてが、災害発生後すぐに通常どおり再開しなければならないとは限りません。
一方で、停止すると顧客や取引先への影響が大きい業務や、一定期間以上止めることが難しい業務もあります。

まずは、どの業務を優先して継続・復旧する必要があるのかを整理してみましょう。
「止まった場合、誰にどのような影響があるか」「どの程度の期間なら停止できるか」といった視点で考えると、自社にとって重要な業務を判断しやすくなります。

重要な業務とそれを支えるITから優先する

重要な業務が見えてきたら、次に、その業務を行うために何が必要なのかを確認します。
たとえば、受発注業務であれば業務システムや取引先の連絡先、顧客対応であればメールや顧客情報など、業務ごとに必要なITや情報は異なります
このように「重要な業務」から逆算して必要なITを整理すると、すべてのシステムを同じように守ろうとするのではなく、優先順位をつけて備えられるようになります。

IT-BCPは大がかりな計画から始める必要はありません。
まずは重要な業務と、それを支えるITの関係を把握することが、具体的な備えを考えるための出発点になります。

IT-BCPでまず考えておきたい4つのこと

重要な業務と、それを支えるITが見えてきたら、次は災害時にもその業務を続けるために必要な備えを考えていきます。
企業によって必要な対策は異なりますが、まずは情報・連絡手段・IT環境・働く場所の4つの視点から、自社の状況を確認してみましょう。

業務に必要な情報を整理する

災害時に業務を続けるためには、どのような情報が必要になるのかを把握しておくことが重要です。

顧客や取引先の連絡先、契約情報、受発注情報、業務マニュアルなど、日常的に利用している情報を洗い出し、どこに保存され、誰がアクセスできるのかを確認しておきましょう。
担当者しか保存場所を知らない、特定の端末からしか確認できないといった状態では、災害時に必要な情報を利用できない可能性があります。

緊急時の連絡手段を決めておく

災害発生時には、従業員の安否確認だけでなく、その後の業務について連絡を取り合う必要があります。
誰が業務継続や復旧について判断するのか、従業員へどのように指示を伝えるのかなど、緊急時の連絡体制や役割をあらかじめ決めておくことが重要です。

また、普段利用している電話やメールが使えない場合も想定し、代わりに利用する連絡手段についても検討しておくとよいでしょう。

IT環境やデータを守り、復旧できるようにする

重要な業務に必要なシステムやデータについては、利用できなくなった場合にどのように復旧するのかを確認しておく必要があります。
データのバックアップを取得していても、復旧方法が分からなかったり、バックアップ自体にアクセスできなかったりすれば、必要なときに利用できません。

そのため、バックアップを取るだけでなく、必要なデータを実際に復旧できる状態にしておくことが重要です。
あわせて、停電や機器の故障、通信障害などが発生した場合に、重要な業務をどのように継続するのかも確認しておきましょう。

出社できない場合の業務継続方法を考える

災害時には、オフィスそのものに被害がなくても、交通機関の停止や周辺地域の被災などによって従業員が出社できないことがあります。
そのような場合に備えて、在宅や別の場所から行える業務は何か、社外から必要なシステムや情報へアクセスできるかを確認しておきましょう。

一方で、すべての業務をテレワークで継続できるとは限りません。
出社できない場合に続ける業務と、一時的に停止する業務をあらかじめ整理しておくことも、事業継続を考えるうえで重要です。

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まとめ|人を守ったその先に、事業を続ける備えを

企業の防災では、従業員の安全を確保することが何よりも優先されます。
しかし、人が無事であっても、パソコンやシステムが使えない、必要なデータにアクセスできない、オフィスに出社できないといった状況になれば、事業を続けることは難しくなります。
だからこそ、防災を考える際には、人の安全を守ったその先にある事業継続まで視野に入れておくことが重要です。

IT-BCPというと難しい計画を作るイメージがあるかもしれませんが、最初からすべてを整える必要はありません。
まずは、自社にとって重要な業務は何か、その業務を支えているITや情報は何かを整理するところから始められます。

防災から事業継続へ。そして、事業を支えるITへの備えへ。
自社では何が止まると困るのかを考えることが、IT-BCPの第一歩になります。

防災のその先、「事業をどう続けるか」を考えてみませんか?

災害への備えは、人の安全を守ることだけでは終わりません。
その後、会社の業務をどう続けるのか、ITが使えないときにどう備えるのかまで考えておくことが重要です。

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