毎年、2月1日から3月18日はサイバーセキュリティ月間です。

デジタル化が加速する現代において、サイバー攻撃は巧妙化の一途を辿り、私たちの生活やビジネスを脅かす存在となっています。

サイバーセキュリティ月間は、国民全体のセキュリティ意識向上と対策強化を目的とした取り組みです。この期間中、政府機関や企業、教育機関などが連携し、様々な啓発活動が行われます。

サイバーセキュリティ月間を機に、私たち一人ひとりがセキュリティ意識を高め、安全なデジタルライフを送るための知識と対策を身につけましょう。

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なぜ今、中小企業にサイバーセキュリティ対策が必要か

うちの会社はそれほど大きくないから、サイバー攻撃の標的にはならないだろう」――このように考えている経営者や管理者の方は少なくないかもしれません。しかし、この考えが大きな危険をもたらす可能性があります。

実際、2024年の統計によると、サイバー攻撃の約65%が従業員300人以下の中小企業を標的としています。その理由は明確です。
大企業と比べてセキュリティ対策が手薄な中小企業は、攻撃者にとって「侵入しやすい標的」となっているのです。

さらに注目すべきは、取引先からの要請という側面です。大手企業との取引において、セキュリティ対策の実施が取引条件として求められるケースが増加しています。ある製造業では、主要取引先から「セキュリティ対策が不十分な場合は取引を見直す可能性がある」との通達を受け、急遽対策を進めることになった事例も報告されています。

中小企業特有の課題とは

中小企業がセキュリティ対策を講じる際、最も大きな壁となるのが「リソースの制約」です。専任のIT担当者を置くことができない、高額なセキュリティシステムの導入が難しいといった課題を抱える企業が大半です。

しかし、このような制約があっても、効果的な対策は可能です。重要なのは、自社の状況に合わせた現実的なアプローチを選択すること
本記事では、限られた予算と人材で実施できる具体的な対策方法を、段階を追って解説していきます。

中小企業特有のリスクと課題

見過ごせない三つの脆弱性

中小企業のサイバーセキュリティにおいて、特に注意が必要な脆弱性が三つあります。まず「人材の不足」です。専任のIT担当者を置くことができない中小企業では、セキュリティ対策の立案から実施まで、すべてを既存の従業員が担当せざるを得ません

次に「予算の制約」です。大企業のように高額なセキュリティシステムを導入することは現実的ではありません。2024年の調査によると、中小企業のIT予算は大企業の10分の1以下であり、その中でセキュリティに割けるのはわずか15%程度とされています。

そして三つ目が「知識・情報の不足」です。日々進化するサイバー攻撃の手法や、最新の対策について、常に情報をキャッチアップすることは容易ではありません

取引先からの信頼確保

近年、特に重要性を増しているのが、取引先からの信頼確保です。サプライチェーン全体でのセキュリティ強化が求められる中、取引先の選定基準として「適切なセキュリティ対策の実施」が重視されるようになっています。

ある自動車部品メーカーでは、セキュリティ対策の不備を理由に、長年の取引先との契約更新を見送られるケースも発生しています。このように、セキュリティ対策は、ビジネス継続の観点からも無視できない課題となっています。

狙われやすい理由

中小企業が標的とされやすい理由は、主に以下の三点です。

まず、セキュリティ対策が比較的手薄であることです。基本的な対策さえ実施されていない場合も少なくありません。「簡単に侵入できる標的」として、攻撃者の格好の対象となってしまいます。

次に、取引先企業への攻撃の足がかりとして狙われるケースです。大企業と直接取引のある中小企業は、特に注意が必要です。実際に、大手製造業への攻撃が、中小の協力会社経由で行われた事例も報告されています。

そして、身代金要求型攻撃(ランサムウェア)の標的としても、中小企業は格好の対象となっています。事業継続への影響を考慮すると、要求に応じざるを得ないケースも多いためです。

すぐに始められる基本対策

コストを抑えた効果的な対策の考え方

中小企業におけるセキュリティ対策で重要なのは、「費用対効果の高い施策から優先的に実施する」という考え方です。高額なセキュリティシステムを導入する前に、まずは基本的な対策で防げるリスクに着目しましょう。

実は、サイバー攻撃の約8割は、基本的な対策で防ぐことができるとされています。特に中小企業では、この「基本の徹底」が極めて重要です。

パスワード管理の見直し

最も費用対効果の高い対策の一つが、パスワード管理の徹底です。多くの中小企業では、以下のような問題が見られます。

  • 簡単なパスワードの使用
  • パスワードの使い回し
  • 共有アカウントの利用
  • 定期的な変更がされていない

これらの問題は、無料もしくは低コストのパスワード管理ツールを導入することで、大きく改善できます。ある小売業では、パスワード管理の見直しだけで、不正アクセスのリスクを約40%削減できたと報告しています。

アップデート管理の重要性

もう一つの重要な基本対策が、ソフトウェアの更新管理です。OSやアプリケーションの更新プログラムには、セキュリティ上の脆弱性を修正する重要な内容が含まれています。

「面倒だから後で」と更新を先送りにする企業も多いですが、この「後回し」が深刻なセキュリティホールとなります。自動更新の設定や、月1回の更新確認日の設定など、運用ルールを明確にすることが重要です。

無料ツールの効果的な活用

セキュリティ対策には、必ずしも高額な投資は必要ありません。
例えば

  • Windowsの標準セキュリティ機能
  • 無料のアンチウイルスソフト
  • クラウドストレージの基本的なセキュリティ機能
  • 無料のメールフィルタリングサービス

これらの無料ツールを適切に組み合わせることで、基本的な防御ラインを構築することができます。

段階的な対策の実施方法

優先順位の考え方

限られた予算と人材で効果的な対策を実施するには、優先順位の設定が極めて重要です。ここでは、「リスクの大きさ」と「実施のしやすさ」の2つの観点から優先順位を考えていきます。

多くの中小企業では、以下の順序での対策実施が効果的とされています:

  1. 基本的な防御態勢の構築(すぐにできる対策)
  2. 重要データの保護(情報資産の特定と管理)
  3. 従業員教育(人的対策の強化)
  4. 監視体制の整備(異常の早期発見)

第一段階:基本的な防御態勢の構築

まず着手すべきは、「すぐにできる」基本的な対策です。ある製造業では、以下の対策を最初の1ヶ月で実施し、大きな効果を上げています。

  • アンチウイルスソフトの導入と更新設定
  • OSやソフトウェアの更新プログラムの適用
  • 共有アカウントの廃止と個人アカウントの整備
  • 重要データのバックアップ開始

これらの対策は、特別な技術知識がなくても実施可能であり、コストも最小限に抑えられます。

第二段階:重要データの保護

次のステップは、自社にとって重要なデータを特定し、適切な保護措置を講じることです。
具体的には以下の通りです。

  • 機密情報の洗い出しと分類
  • アクセス権限の見直し
  • バックアップ方法の強化
  • データ暗号化の検討

この段階では、「すべてを守る」のではなく、「特に重要なものを優先的に守る」という考え方が重要です。

第三段階:従業員教育の実施

技術的な対策と並行して重要なのが、従業員の意識向上です。ただし、大規模な研修プログラムは必要ありません。以下のような実践的なアプローチが効果的です。

  • 朝礼での短時間の注意喚起
  • 実際のインシデント事例の共有
  • 簡単なチェックリストの活用
  • 定期的な確認テストの実施

今後の発展的な取り組み

基本対策の定着から始める段階的な強化

基本的な対策が定着してきたA製作所では、次のステップとして、以下のような発展的な取り組みを計画しています。ここでも、コストパフォーマンスを重視した現実的なアプローチを採用しています。

次の半年での取り組み予定

  • クラウドサービスの活用による情報共有の整備
  • 社内規程の見直しと更新
  • より高度な従業員教育の実施

重要なのは、「できることから着実に」という姿勢を維持していることです。一度に大きな変更を行うのではなく、従業員の理解と協力を得ながら、段階的に対策を強化していく方針です。

コストを抑えた監視体制の構築

セキュリティ対策の次の課題は、「監視」の仕組み作りです。ただし、高額な監視システムの導入は現実的ではありません。そこでA製作所では、以下のような工夫を行っています。

  • Windowsの標準機能を活用したログ管理
  • 従業員による相互チェック体制の確立
  • 定期的な確認作業の仕組み化

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まとめ

重要な3つの視点

  1. 現実的なアプローチ
    予算と人材の制約を認識した上で、できることから確実に実施していく姿勢が重要です。完璧を求めるのではなく、基本的な対策の確実な実施を優先しましょう。
  2. 段階的な実施
    一度にすべてを変更しようとせず、従業員の理解と協力を得ながら、着実に対策を積み重ねていくことが成功への鍵となります。
  3. 継続的な改善
    セキュリティ対策は、一度実施して終わりではありません。定期的な見直しと改善を行い、新たな脅威にも対応できる体制を作っていくことが重要です。

最後に

本記事で紹介したA製作所のような取り組みは、多くの中小企業で実践可能なものです。大切なのは、「完璧な対策」を目指すのではなく、「実行可能な対策」を着実に積み重ねていく姿勢です。まずは自社の状況を正確に把握し、できることから始めていきましょう。その一歩が、より強固なセキュリティ体制への道筋となります。
セキュリティ対策は、企業の継続的な発展のための投資です。本記事が、皆様の企業におけるセキュリティ対策の第一歩となれば幸いです。

サイバーセキュリティ月間を機に社内のセキュリティ対策を見直したいけど、どこから手をつければいいのか…という方はぜひ、Synplanningにご相談ください。
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