秋は人事異動や新規プロジェクトの開始が重なる時期です。
業務量が増える一方で、設定変更や運用の隙が生まれやすく、セキュリティリスクが高まります。こうした状況は、外部からの攻撃や情報漏えいの発生要因となります。
IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、フィッシングやランサムウェアが依然として上位に挙げられており、人的ミスや設定不備が被害拡大の主要因とされています。
政府の年次報告でも、中小企業における被害増加と対策強化の必要性が強調されています。だからこそ、日常業務に「セキュリティチェックリスト」を取り入れ、定期点検を習慣化することが重要です。
秋に増えるリスクと背景
秋は社員の異動や新しいプロジェクトの開始が重なる時期です。そのため、新規アカウントの発行や権限変更が増え、クラウドの設定や端末管理が追いつかないことがあります。このタイミングは、外部からの攻撃が入りやすくなる要注意の時期でもあります。
さらに、秋は台風や停電などの自然災害のリスクも抱えています。過去には、バックアップやBCP(事業継続計画)が十分に機能せず、業務に影響が出た事例も報告されています。加えて、連休や社内行事による人手不足が、監視体制の隙につながることもあります。
こうした背景を踏まえると、秋に向けたシステムや業務の点検は、普段よりも念入りに行うことが重要です。必要な対策を事前に確認し、リスクを最小化しておくことが安心につながります。
社員が取り組める日常チェック
社員がすぐ実行できる日常的なチェック項目としては以下があります。
- パスワード更新状況の確認
長期間変更されていないパスワードや使い回しをなくす。 - 端末の更新適用
OSやソフトウェアの更新を確認し、EDRやウイルス対策の定義も最新に保つ。 - 不審メールの報告ルールの周知
迷ったメールは開かず、情シスに転送する手順を再確認。
このような日常的な確認を社員全員で回すことで、被害の芽を早期に摘むことができます。
情シス担当が押さえるべきポイント
情シス担当者は、社員のチェックだけでなくシステムや権限、委託先まで含めた管理が必要です。
- 権限管理とアクセスログの確認
異動・退職者の棚卸しと特権IDの再点検を実施。 - 外部委託先との連携と監査
契約やSLA、インシデント連絡体制を定期的に確認。 - 設定変更の履歴管理
IaCや監査ログで「誰が・いつ・何を」を明確に残す。
定期的な管理と可視化により、問題発生時の初動対応も迅速になります。
公開事例から見る秋のインシデント(2024~2025)
秋に発生しやすいセキュリティインシデントの公開事例を紹介します。
- クラウド設定・認証まわりの不備(2025年上半期)
認証情報の窃取や設定ミスを足掛かりにした侵入が多く報告されており、SSOや多要素認証(MFA)の未設定が被害拡大の要因です。 - ランサムウェアによる業務停止(2025年まとめ)
バックアップの未分離や復旧手順の不備で被害が長引き、業務停止につながった事例があります。 - 上場企業での漏えい件数増加(2024年)
上場企業・子会社で189件の漏えい・紛失が公表され、原因は不正アクセス、メール誤送信、端末紛失などです。中小企業でも同様のリスクは潜んでいます。 - サプライチェーン経由の不正アクセス(2024年事例集)
委託先の体制変化や権限管理の緩みが攻撃の入り口となり、業務影響を与えた例があります。
委託先や取引先を経由した攻撃のリスクと対策を詳しく解説しています。
実務で役立つ具体的な対策
企業が秋に取り組むべき具体的な対策は以下です。
- ID・権限の棚卸
人事異動前後に必ず確認し、MFA必須化を徹底。 - クラウド設定の自動診断
公開設定や暗号化、ログ取得を一括点検。 - 端末の健康診断
更新状況、暗号化、遠隔ワイプの確認。 - バックアップの3-2-1運用
オフライン・クラウド分離と復旧訓練を実施。 - 訓練と通報動線の整備
フィッシング訓練とワンクリック報告ボタンを全社員に配布。
インシデント発生直後に取るべき初動対応のポイントと具体的手順を解説しています。
まとめ:チェックリストを習慣にするコツ
秋は業務が繁忙になり、人手やシステムへの負荷が高まります。そのため、セキュリティ上の抜け漏れが起きやすい時期です。
こうしたリスクに対応するためには、**日常業務に組み込める「セキュリティチェックリスト」**を活用し、定期的な確認を習慣化することが重要です。
具体的には、次のような運用が効果的です。
- 一般社員:月例でパスワードや端末状態の確認
- 情シス担当:四半期ごとの権限管理やアクセスログ点検
- 外部委託先:半年に一度の監査を実施
これにより、組織全体でリスクを可視化でき、負担を抑えつつセキュリティレベルを確実に維持できます。
また、秋に限らず年間を通じて活用できる仕組みとして取り入れておくことで、継続的なセキュリティ運用が可能になります。