「ゼロトラスト」なんとなく聞いたことあるけど…

「ゼロトラストって、最近よく聞くけど正直よく分からない…」
そんな声を多く聞きます。セキュリティの専門用語のようでいて、ニュース記事や製品紹介にも頻出するこの言葉。

実はゼロトラストとは、技術の名前ではなく「考え方」や「設計思想」のこと。
特定の製品を入れればOK、というものではありません。

ただこの考え方は、クラウド活用・テレワーク・スマホ業務利用などが進んだ今、企業が取り入れるべき新しい「前提」として、多くの組織にとって避けて通れないものになりつつあります。

ゼロトラストとは?

従来のセキュリティは、「社内ネットワーク=安全、社外=危険」という 境界型 の発想で守られてきました。ファイアウォールを設け、VPNで接続し、外からのアクセスを制限することで安全を保っていたわけです。

しかし、クラウドサービスの普及、テレワークの常態化、私物スマホの業務利用…
もはや “社内と社外の境目” が曖昧になってしまったのです。

そこで生まれたのが「ゼロトラスト=すべてを信頼しない」という考え方。

社内だろうと、正社員だろうと、アクセスは常に検証する。
信頼ではなく、検証と制御の積み重ねで安全を保つ。

これがゼロトラストの出発点です。

ゼロトラストの基本原則(NISTの考え方より)

米国のNIST(国立標準技術研究所)が提唱するゼロトラストの原則は、以下の3点に集約されます。

  • 常に検証(Verify Explicitly)
    → アクセスごとにユーザー・端末・場所・動作をチェック。
  • 最小権限アクセス(Least Privilege Access)
    → 必要最低限のアクセス権だけを与える。
  • 侵害を前提に設計(Assume Breach)
    → 万が一突破されても、被害が広がらない構造に。

この3つを軸に、「信頼」ではなく「制御と監視」で守る仕組みがゼロトラストの本質です。

どう始める?ゼロトラスト導入の第一歩

ゼロトラストは一朝一夕に実現できるものではありません。
すべてのシステム、すべての人に細かくアクセス制御をかけるのは現実的に難しく、段階的に進める必要があります。

✅ 中小企業でも始めやすいポイント

  • IDとパスワードの管理強化:パスワードの使い回し防止、MFAの導入
  • 端末管理(MDMなど):不正端末の遮断
  • クラウドサービスへのアクセス制限:IP制限、条件付きアクセスなど

最初の一歩としては、
すべてのアクセスを可視化し、必要なものだけ許可する」という状態を少しずつ目指すのが現実的です。

ゼロトラスト導入でよくある誤解

❌ 製品を買えばゼロトラストが実現する

→ ゼロトラストは「考え方」。
導入にはポリシー設計や運用体制も必要です。

❌ VPNをやめればゼロトラストになる

→ VPNの有無だけでは不十分。
アクセスの検証ログ管理が重要です。

❌ 導入すればすべて自動で守られる

→ 運用ミスや設定漏れがあると逆効果に。
人と仕組みの両方が必要です。

まとめ:まずは身近なところから「信頼しすぎない設計」へ

ゼロトラストは難しそうに見えて、
実は「社内でも気を抜かず、常に検証と制御をかけよう」という、シンプルな考え方です。

一気に全体を変えようとせず、
たとえば「認証を強化する」「見える化から始める」といった現実的な一歩を踏み出すことが大切です。